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原題は「Zel」。 塔に閉じ込められた 金髪のラプンツエルのツエルである。 このグリムの奇譚を下敷きとして物語は展開する。 いつもであれば幸せな未来を示唆して 終結する童話の世界。 その中で邪悪な象徴として登場し 闇に消えさるだけの魔女。 ここではそんな魔女からの視点で語られる。 不妊の哀しみ。所有できない他者の愛。 かなえられない望みに捕らわれ 一人の人間が苦しみ嘆く言葉で 物語の風景は逆転する。 ナポリの「ラプンツエル」では 特に最終章の情景の美しさと 登場人物三人の仔細な心理描写が心に残る。 塔から降りた後のツエルを求めて 放浪する伯爵の息子。 死後もかすかな気配として残る魔女の霊魂。 あるがままのすべての人間を受け入れようとするツエル。 再生へ向かおうとする三人の語りが交差する。 やがてその思いがツエルのもとで一つになり 母親として魔女がありのままの世界を受け入れたとき 彼女自身を苦しめていた妄執は消滅する。 「逃れの森の魔女/ドナ・ジョー・ナポリ/青山出版社/2000.2」 やはり同じ型の物語。 「ヘンゼルとグレーテル」の お菓子の家に住む魔女の視点で語られる。 グリム童話の恐ろしいところは その無名性と普遍性にある。 物語は時空を越えてエンドレスである。 王子に救われた「白雪姫」が やがて鏡を覗く王妃になるように 魔女を炉の中へ突き落とした勇気あるグレーテルは そのかしこさゆえに 未来の魔女を予感させる。 ナポリは童話の深層を見せることで 「昔昔あるところで・・・」という話が 「たった今ここの場所で・・・」起こりうる物語であることを告げている。 |
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